SS感想をダシにして

 碧に架かる贈り物さんで去年の12/1に紹介されているSSのうち気になったものの感想というか、なぜ気になったのかについて。


この手紙に祈りを (雪月さん)


 以前ハヤテのごとく!12巻5話の回想シーンについて色々考えているうちに、物理学者ファインマンが若くして亡くなった妻に宛てた手紙のことが頭に浮かびました。ネットで検索したらちょうどそれを載せているサイトがあったのでリンクを貼らせてもらいます。
 http://d.hatena.ne.jp/thomr/20061223/1166842962
 リンク先の記事の一番最後の手紙の最後の追伸のところを引用。

 追伸 この手紙は出さないけれど許してくれるよね。君の新しい住所を僕は知らないんだ。

 昔雑誌でこの部分だけ読んで(訳がかなり違った気がするが)、愛妻を失ったファインマンの悲しみの表現がずっと記憶に残っていました。どう言っていいのか、そう、知らないんですね。どんなに愛し合っていてもお互いに知りようがない、深い断絶が生者と死者の間には横たわっている。この手紙を書いたのは妻の死後2年後だそうですが、それでもなおそのことを感じずにはいられなかったのでしょうか。


 この手紙の(追伸の)ことを先の回想シーンと重ねて何か書こうかと考えていて結局書けなかったんですが、ちょうどよいSSがあったので書かせてもらいました。
 ちなみに宇宙船の絵を描いた時のナギは悲しみを紛らわせるために母親との思い出を辿るようにして描いていたけど、ふと「ああ、あの母では・・・」と考えるようになって、回想シーンにあるように「謝りたい」と思うようになったのではないかと妄想しています。絵を描くことで自分が思いがはっきりしてきた、ということです。そのあたりがSSで無意識のうちに手紙を書いていたナギの姿と重なる気がします。