東ゴート興亡史(松谷健二)感想

 そういえばローマ人の物語の15巻はまだ読んでない。11巻までは文庫版で、12巻から14巻までは図書館で借りて読んだ。12巻以降はローマ帝国も下り坂の一方で、出てくる人も魅力が乏しいせいかあんまり記憶にないという記憶がある。どこかで言われていたように、あの本ってキャラ萌えなんですね。登場人物が重要。作者も自分がホレたローマ人を書いてるって言ってたと思うし。15巻で西ローマ帝国が滅んで終わりなんだと思うけど、本書「東ゴート興亡史」はそのあとのお話。


 扱われるのは民族大移動で有名なフン族アッティラ西ローマ帝国を滅ぼしたオドアケル東ゴート王国を興したテオドリック大王と彼以降の王達。あと、東ローマ帝国ユスティニアヌス一世と将軍ベリサリウスとかが出てくる。
 いずれも聞いたことはあるというくらいで、よく知らない。特に非ローマ人である前の3人は「蛮族」というイメージがあるが、いずれも「蛮族」からかけ離れた文明的な思考をする人たちだったようだ。ジャガーになった男 (集英社文庫)で主人公が「恐るべきアジア人」というくらいの意味で「アッティラ」と呼ばれてたな、確か。
 ローマ人の物語を読むと、ローマ人のイメージは持てるようになるけれど、蛮族というのはよくわからない。時代が変われば蛮族も文明化する訳で、一括りに「蛮族」といっても蛮族度も色々。西ローマ帝国崩壊後は実質ローマ人とたいして変わらなかったんじゃないかと思う。「これならわかる!蛮族」とか、どっかのそういう感じのシリーズの本から出ないかな。絶対需要は少ないけど。
 オドアケルテオドリックもイタリアを支配したれど善政を敷いて、ローマ人にも好評だったという。テオドリックは中世ドイツの英雄伝説の主人公として人気があるそうだ。


 東ゴート王国の最後から2番目の王トティラと、東ローマ帝国の宦官にして将軍ナルセスの対比は良かった。若く凛々しいトティラと年老いた宦官ナルセスが戦場で向かい合う姿を想像する。漫画か何かの絵で見てみたい場面である。


 同じ著者の「カルタゴ興亡史」もそうだったが、戦争と政治の話の連続で、もうちょっと別の視点が欲しかった。ローマ人の物語はその辺りが非常にうまいから多くの素人に受けたんだと思う。
 既にこの本の続きの「ヴァンダル興亡史」は購入済みなので近いうちに読む予定。