本当にあった陸自鉄道部隊 伊藤東作

 鉄道マニアじゃないです。丸善で適当に本を眺めてたら目についたから買っただけです。よくわからない分野だけど、注の付け方が丁寧でわかりやすいかと思って買ってみました。


 まずタイトル。「本当にあった怖い話」みたいでちょっと笑える。本当も何もたいていの人は、へぇそんなのあったんだ、くらいにしか思わないだろうし。戦前は旧陸軍に鉄道部隊というのがあって、後方支援として軍用鉄道の敷設、保守および敵の鉄道破壊なんかもしていたそうです。戦後も自衛隊に鉄道部隊ができたけど、鉄道技術の進歩とか自衛隊内のいろいろな事情で数年で解散しましたと。


 本書は前半が伊藤氏、後半は防衛研究会なる人たちが書いている。
 前半はマニアックすぎてやっぱりよくわからなかった(笑)。飛ばしまくりです。興味がある人には写真もいっぱいあって面白いのかもしれないけど、一般人にはきつい。マニアの方のなかでも軍用鉄道は特殊な分野なんじゃないですかね。


 後半は国策、特に戦争と鉄道について書かれていて少しはわかる。当時は現在と違って大量輸送できる手段が鉄道以外になかったから鉄道の重要性は非常に大きかったようです(今なら航空機がある)。兵站として鉄道は重視されていたと。ローマ帝国が健在だったら鉄道敷きまくっただろうと想像してしまう。で、本書の最後の方のロシアの鉄道の話を読むと、ロシアのレールはヨーロッパから一気に攻め込まれないようにレールの幅をあえてヨーロッパとは変えていたという話があります。これって中世ヨーロッパの道が敵の侵攻を遅らせるために曲がりくねってつくられていたって言う話とダブる。ローマ帝国は自国の道路が敵の進軍にも使われる危険を承知の上で、高速移動が可能な道路を造ったんですけどね。ロシアの鉄道もレール幅を一致させれば、ロシア-ヨーロッパ間の鉄道旅行がより快適になっただろうに、たぶんこのせいで当時はロシア-ヨーロッパ間の旅行者は夜中に乗り換えさせられたりしたんだろうなぁ、と同情してしまう。
 関係ないけどシベリア鉄道って一回乗ってみたい。
 
 
 満州事変のきっかけとして鉄道破壊はよく知られているけど、その辺りの時代ではロシアと日本が東アジアの鉄道租借権の争奪戦をしていて、なぜに租借権をほしがったかというと、「鉄道を敷設する権利を得る」→「その鉄道を保護する権利を得る」→「鉄道沿線を領土にできる」という流れがあった、というのを何かで読んだけど、なんだったか忘れました。


 数年前に夜中に放送されていたドキュメンタリー番組で、北海道の最北端あたりの道路はソ連軍が侵攻してきた時のことを想定して造られている、という話を聞いて道路建設が軍事がからんでくるのが興味深かったが、本書も鉄道と軍事が密接に関係していた事がわかって面白かったです。